それ以外の国際経営もある。自分の国で原材料を調達し、それを使って商品を作り、自分の国でそれを売っていた企業が、原材料を海外から調達し始めるのも、国際経営である。海外に工場を建てて現地で製造したり、海外の別の企業に製造を委託したたりして、引き続き自国で販売するケースも、国際経営である。調達や製造の国際化だ。いまのようにグローバル企業になる前のユニクロが、その代表例だろう。中国の協力会社に製造委託し、価格を抑えた商品を日本に輸入して国内で販売していた。
もちろん、製造拠点を内外に持ち、販売も世界中で行うという、調達・製造も販売も国際化した本格的な多国籍企業もある。現在のトヨタやソニーを始め、日本を代表するグローバルな大企業の多くがそれにあたる。
変わり種の国際経営は、本社だけが自国にあって、それ以外は世界中で活動している企業、あるいは便宜的に本社がある国に存在しているだけで、企業の活動は初めからグローバルという企業もある。「生まれつきグローバル」企業(Born Global Firms)である。パソコンのマウスやキーボードなどの周辺機器メーカーとして世界的なロジテック(Logitech)という会社は、その代表例だろう。今から40年も前に、アメリカ人エンジニアがスイスに本社を設立し、アメリカに研究開発拠点を、アイルランドや台湾に工場を建てて、最初からグローバルに活動していた。
なぜ学ぶのか?
その最も大きな理由は、国際経営は簡単ではないからである。ハーバード大学ビジネススクールは、企業のケース・スタディで知られ、数多くのケースを出版している。その中でも有名なのが、ウォルトディズニー社の国際経営である。同社は、かつてアメリカだけにテーマパーク事業を展開していたが、1983年に初めてアメリカ以外の国でテーマパーク事業を始めた。東京ディズニーランドである。その後、パリ(1992)、香港(2005)、上海(2016)でもディズニーランドを開設した。現在、米国内2か所と海外4か所で、事業を展開している。いずれも、基本的には映画やゲーム、キャラクタービジネスとシンクロするという、まったく同じビジネスモデルの上に、ほぼ同じ内容のパークを世界各地に作り、運営している。
(ディズニー氏によるディズニーランドのオープニング、1955年
出典:https://en.wikipedia.org/wiki/File:Waltopening.jpg)
出典:https://en.wikipedia.org/wiki/File:Waltopening.jpg)
どこらへんが難しいのか。なぜ難しいのか。どのようにすれば、そのような困難を克服し、海外で事業を成功させられるのか。そして、これらの問題は、どういう理論を使って考えればいいのか。これが国際経営で学ぶ中心的な内容である。
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