2020年5月1日金曜日

企業の目線で国の違いと向き合うとは(1)

企業が国際化する、つまり会社が事業を海外で行おうとするときに、これから向かおうとする国のことを、どれだけきちんと理解すべきか。

たとえば我々が海外旅行をしようとするときは、どうだろう。ガイドブックを読んだり、ネットで調べたりする人もいれば、事前に何も調べず、行き当たりばったりで旅行する気ままなバックパッカーもいるかもしれない。

行き当たりばったりで海外進出しても、いいんじゃない?

遊びで「会社ごっこ」をやっているのだったら、行き当たりばったりもありだし、結果オーライでいいかもしれない。しかし普通、企業は株主から出資してもらい、銀行から融資を受け、それらのお金を使って人を雇い、オフィスを借り、必要なものを調達して仕事(生産活動)をする。そしてそれらにかかった費用を上回る売上げを出して、初めて、会社を続けることができる。

だから、企業の経営者は「外国に進出しても大丈夫、事業がますます成長する」という確信を持てないといけないし、それをステイクホルダー(株主、銀行、社員、取引先など)に対して伝え、協力を仰ぐという「説明責任」を果たさなくてはならない。その第一歩が、国の違いを企業の目線で把握することなのだ。

国の違いを理解する第一歩

企業経営の観点で、自国と外国の違いをきちんと把握する、と言ってすぐに思いつくのが、海外にも自社の商品を買ってくれるお客さんがいそうかどうか、いわゆる海外市場(マーケット)の大きさをめぐるものである。

1人当たりのGNP(国民総生産)

1人当たりのGNP(国民総生産)を調べることで、その国の平均収入が分かる。そこから、およその購買力がわかる。これらの数値が小さい国とは、あまり豊かではない国ということになる。例えば日本では、マクドナルドのハンバーガーは安くて美味しい、ちょっと小腹がすいたときに便利なカジュアルな食事とされている。しかし1人当たりのGNPやGNIが少ない発展途上国では、ちょっと特別な時にしか食べることのできない高根の花となる。

1人当たりのGNP(国民総生産)は、賃金相場を調べるときにも参考にされる。これらの数値が小さい国は、お客としては購買力がないかもしれないが、社員として雇うときには、安い給与で雇用できる可能性がある。今から20年ほど前、多くの日本企業が中国に進出したときの理由は、中国のお客さんに日本の商品を買ってもらうためというよりも、中国の労働者を低賃金で雇い、安く商品を作って日本や海外に輸出するためだった。

人口・GNP

人口を調べることで、どのくらいのお客さんがその国に存在しそうかどうかがわかる。人口が多ければ、お客さんも多い可能性がある。だから1人当たりのGNP(国民総生産)に人口を掛けたGNP(国民総生産)が、マーケットのおよその大きさということになる。

GNP成長率

GNP成長率というデータも従業だ。これを使うと、来年は今年よりも商売が伸びそうか、何%ぐらい増えそうか、その国に将来性はありそうか、ということを予想することができる。たとえば2018年から2019年にかけて、日本は0.7%成長した。実質的には変化なしという水準である。他方でインドネシアは5%、中国は6%、ベトナムは7%、成長している。(IMF統計)多くの企業が頭打ちの日本市場にとどまるよりも、将来性のあるアジア各国に進出したくなるのもわかる。

国土・資源・平均年齢・所得格差など

これ以外にも、国土の広さや資源、平均年齢や所得格差なども、重要なチェックポイントだ。国土が広いと、あちこちに支店を作らないとお客さんをカバーできないかもしれない。天然資源が豊富で安ければ、現地での生産に有利かもしれない。平均年齢が若ければ、人口もまだまだ増えるだろうから、お客さんの観点でも、労働者の雇用の観点でも、将来性が見込めるかもしれない。所得格差の大きい国だと、いくら1人当たりのGNPが高くても、現実にはひとにぎりの大金持ちと、大勢の貧しい庶民からなる国なので、実際には多くの国民の購買力はそれほど大きくないことになる。安い賃金で雇用できるということもあるだろう。

これらの指標をちょっと確認するだけで、その国についてかなりのことがわかる。「企業の目線」で国の違いを理解する第一歩である。

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