2019年2月12日火曜日

デンマーク人は、午後4時に退社してなにをするのか?

デンマークでは、平日の午後4時すぎごろから、オフィスが閑散としてくる。

午後5時すぎにオフィスにいると、ものすごく遅くまで仕事をしている気分になる。残業はほとんどしない。飲み会はなく、飲みに誘っても、まず来ない。金曜日は、午後3時にもなったら帰途につき始める。就業開始は午前8時や8時半など、日本よりも早いことが多いといえ、長時間労働が当たり前の日本と比べると、オフィスで仕事をしている時間は、明らかに少ない。

それで一人当たりのGDPが日本よりも高いことの理由の一つに、時間当たりの生産性が高いことは、別のところで触れた。今日は、そんなに早く仕事を切り上げて、そのあとに何をしているのかについて、気が付いたことを書く。

若い世代は、子育てに時間を使っている。パートナーは男女対等に、役割を分担しているようだ。朝は、自転車の前に乳母車をくっつけた「クリスチャニア・バイク」に子供を2~3人乗せて、保育園や幼稚園に連れて行く。ラッシュアワーの街角で、クリスチャニア・バイクをこぐ男女比率を数えてみたが、ほんのちょっぴり女性が多いもののほぼ五分五分だ。保育園に子供を預けたら、そのまま自転車で出勤する。帰りも同様である。


(http://livingcph.dk/where-to-borrow-a-christiania-bike-for-free/)

デンマークの合計特殊出生率は90年代からの20数年間、平均して1.7で、日本の1.4を大きく上回る。先進国のなかでも際立って高い。成人女性のほとんどが仕事を持つ共稼ぎだ世帯だが、保育園や学童保育の充実を含む高福祉政策とともに、短い労働時間も、高い出生率に寄与していることは間違いない。

しかし労働時間が短いのは、子育てに忙しい若い世代だけではない。中堅以上の世代の社員も、午後4時には帰り始める。子育ての終わったデンマーク人は、午後4時に退社してなにをするのだろう。

皆、さっさと家に帰って、家族そろって食事を共にする。そのための準備を、共にする。コミュニティ活動も活発である。サッカーやソフトボール、カヤック、水泳などスポーツ系のクラブ、読書会や詩の朗読会、料理など文化・芸術系のクラブが代表的なようだ。自分たちが楽しむものばかりでなく、子供や恵まれない人たちを支援するボランティア活動も多い。デンマーク人のおとなの7割近くが、このような何らかの会員組織に所属しているという。夕食の後にこのような活動に参加することもあるし、週末も充てられる。

また、外壁の塗り替えやちょっとした修繕をはじめとした、家のリノベーションの大工仕事など、日本人だったらやらないようなことまで、自分たちでDo It Yourself (DIY)をやっている。日本では、たまに一部の男性が趣味でやっているようだが、こちらでは多くの場合、夫婦やパートナー、親子などが分担してやる。人件費が高いということも、その背景にあるようだが、住み心地の良い住居にこだわり、インテリアに凝る北欧の文化も影響しているのかもしれない。

こちらに来て、ときどき家に食事に招いてもらうことがある。たいていは1か月以上先、場合によっては2か月も先のスケジュールを聞かれて、最初のうちは不思議に思っていた。しかし、デンマーク人の毎日のスケジュールが、結構、詰まっていることを知るようになり、なるほど、そういうことかと分かり始めた。みな、毎日、忙しい。午後4時にオフィスを退社しないと、やることがいっぱいあるのである。

そしてこのような生活をしていると、仕事とは、人生のなかの、重要であるがあくまでも一つにすぎないことが、よくわかる。起きている時間のほとんどが仕事のためにあり、仕事で壁にぶつかると、人生の壁にぶつかったような気分になる人間とは、かなりちがう人生観や世界観をもっているらしいのである。この国の人たちの幸福度が高いという話とも、つながっているに違いない。

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